ギター練習のヒント

音楽は具体的なもの!?

一般に音楽は形の無い抽象的なものだと考えられています。
音は抽象的なものであり、音楽は抽象的な芸術表現である・・・しかしそれは本当なのでしょうか?
ギターとも何かとかかわりの深い日本を代表する作曲家、武満徹氏の興味深いエッセイを読んだことがあります。その中で武満氏は「芸術は創造精神の具体化にほかならない」「作品はあくまで具体的に、生々しい音楽感動を伝えるものでなければならない」と書いています。
武満氏はもちろん「音の抽象性」については認めているものの、音楽作品自体は具体的に伝達するものでなければならないと考えているのです。

これは演奏者にとっても当てはまる事ではないでしょうか?
演奏者がギターを演奏する時にイメージするのは、おそらく言葉にできない抽象的な「精神」であったり「感動」であったりするでしょう。しかしそれを相手に伝えたいと思うならば、それを相手に伝わる形で表現しなければならない、自分のイメージを、相手の心にも湧きおこすためのコミュニケーション手段が音楽と言えるのです。

このときに必要なものは、抽象的な精神論ではなく具体的なテクニックや表現方法といったものでしょう。いくら豊かなイメージを持っていても、それを表現する手段がなくては相手に届きません。何かを伝えたいがために音楽家は常にそのための技術を磨いているわけです。聞き手に何も伝える気がない演奏というのはむなしいものです。
例外として「技術はつたなくても情感あふれる演奏」という評価の演奏もあるでしょう。ただしこれも機械的なテクニックは無くても相手に何かを伝えられる、別の種類の表現する技術を持っていると言えるのかもしれません。

私もレッスンの時は「そこはもっと情熱的に!」とか「そこはもっと感傷的に!」などの抽象的な指摘はできるだけ避けて、それではどうすれば情熱的に聞こえるのか?どうすれば感傷的に聞こえるのか?という具体的な指導になるよう気を使っています。レッスンというのもやはり伝えること・・・具体的なコミュニケーションなのです。

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