黒いデカメロン(El Decameron Negro)はキューバの作曲家レオ・ブローウェル(Leo Brouwer、1939~)の1981年の作品。
「戦士のバラード」「こだまの谷を逃げていく恋人たち」「恋する乙女のバラード」の3楽章から成っています。
ブローウェルは1970年代は無調の前衛的、抽象的な現代音楽の傾向を持つ作品が多かったのですが、この「黒いデカメロン」あたりから「ハイパーロマンチシズム」と自ら称する抒情的な作品が増えてきました。
「黒いデカメロン」はドイツの人類学者レオ・フロベニウスによって収集されたアフリカの民話がもとになっており、「デカメロン」はボッカチオ作の同名の物語集になぞらえているようです。
第一楽章「戦士のハープ」/El Arpa del Guerrero
ハープ奏者になったために村を追放された戦士が、故郷の危機に再び武器を取るという物語に着想をえています。
タイトル通りハープを思わせる音型や戦いを予感させる不安定な変拍子などが印象的です。
第2楽章「こだまの谷を逃げて行く恋人たち」/La Huida de los Amantes por el Valle de los Ecos
追放された戦士は村の危機に禁を犯して村に戻るがふたたび罰せられそうになり、自分を慕う娘とともに脱出するという物語。
娘と戦士が駆け抜けていく様、2人で語らう様、そしてこだまの音が響きわたる不思議な谷・・・様々な情景が描かれていきます。
第3楽章「恋する乙女のバラード」/Ballada De La Doncella Enamorada
戦士を慕う娘を描く抒情的な1曲。 シンコペーションが印象的な明るくロマンチックなテーマとアフリカ的なリズムを感じさせる躍動感あふれるパートの対比がユニークです。